印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載093
裏窓 [Rear Window]USA 1954
監督:アルフレッド・ヒッチコック

主演:ジェイムス・スチュアート、グレース・ケリー、レイモンド・バー

ヒッチコック・リバイバル特集のようなものが80年代にあって数本観たが、その中でこの「裏窓」が気に入った作品である。アパートの中庭に向かって窓越しにいろんな人の部屋が見える。足を骨折した報道カメラマンが、椅子に座りっぱなしで暇に任せて各人の生活を覗いている。ダンサーの卵、ピアニスト、ミス・ロンリー、彫刻家、犬を飼っている夫婦、そして病気の奥さんのいるセールスマンなど、それぞれの生活がある。まるでドール・ハウスのアパート版を見ているような感じである。

映画のイントロあたりにグレース・ケリーがいきなりアップで現れる。そのまま近づいてきてアップのキスシーン。この出かたが大胆で驚かされる。キスシーンの横顔は魅惑的でとても美しい。

毎日見ていると様子が違う部屋に気が付く。セールスマンの部屋の病気で寝ていた奥さんがいない。観察するとセールスマンの行動がおかしい。その話を怖いもの知らずのお嬢さんの彼女にすると、俄然、好奇心が湧いてきて、その男を外に誘き出して部屋を調べようと言い出す。部屋を調べていると、彼が部屋に向かって帰ってくるシーンは、同時にカメラが撮しているので、初めて観たときはハラハラした。うまい見せ方である。

最後のオチもユーモアがあって面白いが、ダンサーの卵の部屋に集まる男達、ピアニストの部屋でのパーティ、ミス・ロンリーがピアニストの曲を聴いて思いなおす様子をを織り交ぜたりして見せてくれる。ダンサーの卵のところに兵隊の彼氏が帰って来るシーンは、ノーマン・ロックウェルの絵を見ているようである。


連載094
プレイタイム[Playtime]フランス 1967
監督:ジャック・タチ

主演:ジャック・タチ、バルバラ・デネック、ジャクリーヌ・ル・コンテ

ティーンエイジの頃、日曜日の夕方6時半から「おとっつぁん、お粥ができたよ」「いつも、すまねーな」「おヨビでない、コリャマタ失礼しました!」「ハレホレヒレハレ」や「ガチョーン!」のコントを観てガハハ!と笑った後、「ああ、明日からまた学校か」と現実に戻って悲しい気分になったあの頃がなつかしい。[シャボン玉ホリデー]はコントだけではなく歌って踊っての当時では「夢で逢いましょう」とともに最もお洒落な番組だった。踊りながらバンドの指揮をしていた変なおじさんのスマイリー小原や、[ヒョッコリひょうたん島]のドン・ガバチョの声でお馴染みの何カ国もの外国語を出鱈目(デタラメな漢字である)に話す藤村有弘もイカしてた。

これはそんなティーンエイジの頃にリアルタイムで観たかった映画である。無邪気に笑えた気がする。笑いは旬のときがあるので時代が過ぎるとそれほど笑えなくなってしまうが、お洒落なセンスは流石ジャック・タチである。ブースの並ぶオフィスを上から見るシーンはモダンな感覚がすばらしい。[ぼくの伯父さん]でも家やインテリアがちょっと風変わりでお洒落だった。

開店当日のオープン時間になってもまだ準備に追われているレストランに、アメリカの観光客やパリのめかしこんだお客がどんどん集まってきて、あーなって、こーなって、そーなってと次々起こる組み合わされた連続のギャグが見せどころである。台詞より観て可笑しいスラップスティック・コメディがジャック・タチ監督の原点であろう。

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