印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載089
アニー・ホール[Annie Hall]USA 1977
監督:ウディ・アレン

主演:ウディ・アレン、ダイアン・キートン、トニー・ロバーツ、ポール・サイモン

最初にウディ・アレン監督の映画を好きになったのはこの[アニー・ホール]である。以後、見続けて数本をマイ・フェイバリット100にリストアップしている。[マンハッタン][スターダスト・メモリー]や[ハンナとその姉妹]もいいが、この同タイプのなかで[アニー・ホール]を代表としてとりあげた。

あのルックスで、神経過敏で、愛に飢えていて、ドジしっぱなしの理屈っぽいインテリ・ニューヨーカー。この滑稽であり、哀しくもあるようなキャラクターが人ごととは思えない親しみを感じてしまう。彼はそれを演じるわけではなく、彼そのままの姿に感じさせるところが、気忙しくストレスの溜まりやすい現代社会の憂鬱で不安な気分に共感を呼ぶのであろう。これはイメージなので、実際は、知的でダイアン・キートンやミア・ファーロウなどの女優にもモテモテ。懐かしいジャズを愛し、クラリネットを演奏する監督である。

ダイアン・キートン演じるアニーは、男物の服を着たりした面白いファッションで、危ない運転をする、マリファナ好きのちょっと変わった可愛い娘。距離をおいて付き合おうと思っていたら、ゴキブリか蜘蛛で大騒ぎで呼び出されて、すぐ荷物をまとめて引っ越して来るんだもんね。彼女の作戦だったかも。ずっと一緒に居てると、恋もいつしか冷める。そして、居なくなってから分かるんだよね、寂しくてやっぱり一緒のほうがいいと。男は引きずるんだけど、女性はもう次に向かっている。逞しい。

はっきりしたストーリーはなく曖昧に終わっているので、二人の往く道をいろいろと想わせるエンディングである。台詞が面白く何度も楽しめる映画であり、友人宅でコケインをくしゃみで吹き飛ばしてしまうシーンはおかしかった。


連載090
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ[Buena Vista Social Club]
ドイツ、アメリカ、フランス、キューバ 1999
監督:ヴィム・ヴェンダース

主演:ライ・クーダー、イブライム・フェレール、ルベーン・ゴンザレス、エリアデス・オチョア、オマーラ・ポルトゥオンド、コンパイ・セグンド

ミュージカルはどうも好きになれないが、音楽ドキュメント映画は大好きである。6・7年程前にも上映されて見た「真夏の夜のジャズ」(1960年頃)。若き日に見て圧倒された「ウッドストック」や録音風景を垣間見た 「レット・イット・ビー」など傑作の音楽ドキュメント映画の中にまた一つヴィム・ヴェンダース監督によるラテン・ミュージックのドキュメント映画の傑作が加わっった。

出演者は、残念ながら2003年に亡くなったが、90歳を越えても元気だったコンバイ・セグンドや同じく昨年に亡くなったルベーン・ゴンザレスをはじめとして、おじいちゃんと言っては失礼な筋金入りの超ベテラン・ミュージシャン。彼らが集まって演奏する事になるいきさつは映画の中で語られるが、官能のキューバ音楽の華々しい時代を奏でてきたパフォーマンスは味わいを増して私の心を満たしてくれた。 彼らの今の生活やインタビューを交えて個々の人間をうかびあがらせることで、演奏がより生き生きと聞こえてきた。また、キューバの街並も興味深くそこで見られた車は50年代以前の丸みのあるラインでなんともいい、時が止まっているよう。

カーネギー・ホールでのコンサートのためニューヨークへ来て、街角でショーウインドーを見ながらの会話もほほえましかった。初めてニューヨークに来た愛妻家のイブライム・フェレール は、華やいだ街で「この素晴らしい感動を、妻にも見せてやりたい」と語っていた。 ライ・クーダーやヴェンダース等によって宝物が発掘されたかのように彼等が世界に紹介され、映画を見て一番気に入ったイブライム・フェレールの美しい歌声をCDで聞きながら残像を思い浮かべると、固まった心がほぐれてくる。新しい宝物を見つけてとてもうれしい気分である。

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