印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載085
ラスト・ショー[The Last Picture Show]USA 1971
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
主演:ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、エレン・バーンスティン

50年代初めのテキサス。砂埃を舞い上げる風が吹きすさぶ人影もない小さな町。古ぼけたトラックのカーラジオからハンク・ウイリアムスのカントリー・ソング[Cold Cold Heart]が流れる。モノクロームの映像が、時代にピッタリと合って乾いた侘びしさを募らせている。TVの普及により入場者が減って閉館することになった、町で唯一の映画館最後の映画を、翌日朝鮮戦争に出兵する親友と見に行く。その最後の映画はテキサスが華々しかった頃のハワード・ホークス監督、ジョン・ウエイン主演の[赤い河]。

DVDで観たボグダノヴィッチ監督のインタビューによると、原作と同じところで撮影したそうだが、いくつかの不倫の話が表に出るのを町の人は嫌がったようである。ストリーに出てくる実際の人物もその町に居たようである。原作は、ラリー・マクマートリーで脚本も担当。その後[ロンサム・ダブ]でピュリッツアー賞、[愛と追憶の日々]の原作も映画化されている。あえてモノクロにしたのは、オーソン・ウェルズに勧められたのと、カラーでは綺麗に映りすぎると思ったからだそうだが、50年代初めの雰囲気が良く出ている。2年後に監督した[ペーパー・ムーン]もモノクロームで撮っている。

キャスティングでは、ジェフ・ブリッジスは当時新人で、最近観なおしてこの映画に出ていたのを知った。女の子も全くの新人だが周りの大人を渋い役者で固めている。そのなかでジョン・フォード監督のウエスタン映画によく出ていたベン・ジョンソンの出演交渉は、ジョン・フォード監督から声をかけて貰ったりして頼みこんだようである。そして、彼はアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。主人公の高校生と不倫の仲となる先生の奥さん役のクロリス・リーチマンも最優秀助演女優賞を受賞する。選曲は映画の設定の1951年以前の曲だけにして、それ以降の曲が入らないように厳しくチェックしたそうだ。テキサスの片田舎という場所柄ほとんどカントリー・アンド・ウエスタンである。

主人公(ティモシー・ボトムズ)が親父のように慕っている映画館やカフェのオーナー(ベン・ジョンソン)と釣りへ行く。そこはオーナーの思い出の場所で、かっての恋の話を淡々と語るシーンがいい。失恋して朝鮮戦争に行く親友(ジェフ・ブリッジス)、その彼女も町を去る。親しい人の死。閉館する映画館。主人公の喪失感は、1972年の若い頃に観たときは地味な映画としか感じなかったが、30歳も年を取った今、消えていくものへのいとおしい侘びしさを強く感じる。73年に制作された60年代初めの頃の[アメリカン・グラフィティ]とは違う面を見せる青春映画である。


連載086
イエロー・サブマリン [Yellow Submarine]UK 1968
監督:ジョージ・ダニング、ジャック・ストークス

最近のディズニー・アニメや大ヒットした日本のアニメにも全く興味はないが、万博の年の70年、デザイン学校に通っていた頃このアニメを観て、斬新なデフォルメとカラフルな配色にびっくりだった。翌日も観に行ったが、二日続けて観たのはこの映画だけである。プッシュピン・スタジオのシーモア・クアスト、ミルトン・グレーサーを思わせるイラストに、当時流行のサイケデリックな配色の怪獣や魚がいろいろ出てきて面白かった。

昨年暮れ、友人との映画会でこのアニメを30数年ぶりに観た。さしてストーリーというものも無く、鮮やかな画面を眺めビートルズのサウンドを聴く感覚的なアニメだが、とても懐かしくかといって、古さを感じない。その中に写真をモノクロでコラージュにしたような翳りのある映像はイギリス的な感じである。音楽は[イエロー・サブマリン]のサントラをはじめ、アルバム[サージャント・ペパーズ‥‥]から数曲と[エリノア・リグビー]や[愛こそはすべて]が聞かれる。この中の曲では、67年テレビで世界各国からの衛星中継同時放送があり、イギリスはビートルズが新曲を披露して歌った[愛こそはすべて]がいちばん好き。

what's news

勤 賀 新 年

暖かい正月でした。今年は何をするとは具体的に決めたものはありませんが、シルク版画展をしようか考え中。
CIRO'S What's Newsの[フェイバレット・シネマ100]は8月で終わるので、ひきつづき毎月連載の新しいものを始めます。
今年もよろしく。