10ミニッツ・オールダー[人生のメビウス][イデアの森]
(2002年ドイツ・イギリス)

15人の巨匠、名匠、鬼才などなどの監督が共通のテーマで10分ずつの短編を撮った豪華なコンピレーション・フィルム。 これら監督が10分という短い時間でどんなものを観せてくれるのか、興味しんしんで観に行った。これは2つの映画に分けられている。一つは[人生のメビウス]で、もう一つは[イデアの森]というタイトルである。作品と作品の間には流れる水面の映像に[人生のメビウス]はモダンジャズ、[イデアの森]ではチェロの独奏が流れ、美しく心地よかった。

[人生のメビウス]には[過去のない男]のアキ・カウリスマキ、[ミツバチのささやき]のビクトル・エリセ、[フィッツカラルド]のヴェルナー・ヘルツォーク、[ストレンジャー・ザン・パラダイス]のジム・ジャームッシュ、[パリ・テキサス]のヴィム・ヴェンダース、[マルコムX]のスパイク・リー、[北京ヴァイオリン]のチェン・カイコーの7名。

この監督達はそれぞれのスタイルを出している。特にビクトル・エリセのモノクロの色調といい、映像が美しい。ジム・ジャームッシュは主演女優がトレーラーの控え室で10分の休憩する時間そのままの映像。次から次へとスタッフが来て休まらない状態。運ばれた食事に手もつけず、その中で煙草を消すシーンにぎょっと驚く。食べることをおろそかにし、忙しく仕事して何が人生だといっているのかと思ったが、食文化の貧しいアメリカの監督だから、そんなつもりでは無いのか?ヴィム・ヴェンダースのバッド・トリップ状態の映像が面白い。サウンドも激しく映像と合っていた。ヴェルナー・ヘルツォークはいつも南米の原住民が出てくる映画だが、今回もアマゾン奥地で何千年も同じような暮らしをしてきた原住民が文明人に遭遇することで、アッという間に生活が変わってしまう話。映像はTVでも見たようなもので、新鮮味はない。スパイク・リーはすごい接戦だったブッシュとゴアの大統領選挙の最後の様子のインタビュー。そんなことがあったなと思い出した。ゴアが大統領になっていたら、イラクはどうなっていただろうかとちょっと頭をよぎる。しゃべりばかりで面白くない。

一方の[イデアの森]は[ラスト・エンペラー]のベルナルド・ベルトリッチ、[リーヴィング・ラスベガス]のマイク・フィギス、[スイート・スイート・ビレッジ]のイジー・メンツェル、[メフィスト]のイシュトヴァン・サボー、[ガーゴイル]のクレール・ドゥニ、[ブリキの太鼓]のフォルカー・シュレンドルフ、[イル・ポスティーノ]のマイケル・ラドフォード、[勝手にしやがれ]のジャン=リュック・ゴダールの8名だが、私には全くなじみのない監督が3名いる。

こちらの方は素晴らしい作品と面白く無いものが、はっきりとしている。 マイケル・ラドフォードの宇宙へ行って地球に帰ってきた宇宙飛行士の宇宙時間と地球の時間のずれで生じる、アッという話。10分の時間でこの膨大な時間差を表現しているのは面白いが、これは[猿の惑星]と同じような展開である。

15人の中でいちばん私が気に入ったのは、ベルナルド・ベルトリッチ監督。インドの寓話を映像にしている。世の中は、悠久のインド時間と先進国のめまぐるしい時間ではかなり違う。そんな時間を一つのストーリーに合体させた面白さ。洗濯機が洗濯したり、飛行機や新幹線で目的地に素早く到着したり、パソコンに向かって動かずして仕事が片づく。便利で時間が余るはずなのにどんどん忙しくなる現代。こんな事を考えてしまう映像。「光陰、特急列車の如し」木陰で笛を吹くインド人の後ろを列車がハイ・スピードで通過するのが印象的。

■大阪梅田ではスカイビルの[人生のメビウス]は4Fガーデンシネマ4F、
[イデアの森]は3Fシネ・リーブルで上映中

 

映画誌[キネマ旬報]恒例の選考委員の投票による2003年ベスト5。
邦画
1位 美しい夏キリシマ
2位 赤目四十八瀧心中未遂
3位 ヴァイブレーター
4位 ジョゼと虎と魚たち
5位 阿修羅のごとく

洋画
1位 戦場のピアニスト
2位 トーク・トゥ・ハー
3位 めぐりあう時間たち
4位 ボウリング・フォー・コロンバイン
5位 ラスト・サムライ

映画誌[キネマ旬報]読者選出ベスト5
邦画
1位 座頭市
2位 阿修羅のごとく
3位 東京ゴッドファーザーズ
4位 ロボコン
5位 黄泉がえり

洋画
1位 戦場のピアニスト
2位 ラスト・サムライ
3位 トーク・トゥ・ハー
4位 シカゴ
5位 めぐりあう時間たち

選考委員による邦画のトップ5は、ほとんどなじみがないが、1位の美しい夏キリシマは2月より大阪は九条のシネ・ヌーボーで3月19日までロードショー上映中。ジョゼと虎と魚たちは今年ガーデン・シネマで上映していた。赤目四十八瀧心中未遂ヴァイブレーターはいつ上映されたかも知らなかった。
洋画はヒット作品群だが 、ほとんど観ていない。最近、指定席になっているところが増え、たまたま見に行ったが2回分満席で帰ってきたこともあった。月1回の映画の日にそんなところへ行っているのが、間違っているんだけど。

私の昨年の邦画+洋画ベストは
1位ボウリング・フォー・コロンバイン 2位過去のない男 3位ブルークラッシュ 4位WATARIDORIでした。    

 

 


印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。  

連載087
童年往事・時の流れ 台湾 1986
監督:候孝賢(ホウ・シャオシェン)

主演:ユウ・アンシュン、ティエン・フォン、シン・シューフェン、メイ・ファン

監督自身の少年時代を映画化したものは興味深い。フェリーニ監督[アマルコルド]トリフォー監督[大人は判ってくれない]ルイ・マル監督[さよなら子供達][好奇心]ベルイマン監督[ファニーとアレクサンデル]ウディ・アレン監督[ラジオ・デイズ]などが思い浮かぶが、候監督の自伝的作品がこの[童年往事・時の流れ]である。

中国大陸から台湾に一家で移住してきた家族。そのなかで長男のアハ少年を中心に小学生と高校生のころのエピソードを綴った物語。 アハ少年は1947年生まれとなっているので、私とほぼ同世代である。家の近くの広場で、独楽回し、ビー玉遊びをする少年達が私にも懐かしく思われる。そして、彼のお父さんの親戚・知人など海外から来た手紙の切手を水に浸け、紙からはがれたら窓ガラスに貼り乾燥させ、切手ホルダーに保存する切手集めのシーンがある。私の場合は海外からの手紙は無かったが、同じように切手を集めいろんな絵やデザインを眺めていた。

アハの祖母は、よく道に迷って輪タクで帰ってきたが、可愛がっていた彼を連れて大陸へ帰ろうと出かけて行くときもあった。彼女には、望郷の念が強かったのであろう。しかし、近場をうろうろするだけで帰り道を知らなかったようだ。アハと道端にあった青ザクロをもぎ取るシーンが微笑ましい。

少し大きくなった高校生の頃アハ君は、恋や娼館での初体験より近所のグループとのケンカに明け暮れているのが印象に残っている。公立美術大学の前年競争率をみて即ギブアップして、クラブ活動もせずラジオから流れるポップスだけが楽しみだった私のしらけた高校時代とは全く違う血気盛んなアハ君であった。自分の成長と共に家族も変わっていく、エピソードを積み重ねて綴る童年往事。だれにもある思い出は楽しくて、哀しくもあり、そして美しい。


連載088
スター・ウォーズ[Star Wars]USA 1977
監督:ジョージ・ルーカス

主演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー他

かって、大阪梅田にあったシネラマOS劇場で初めて観たときの驚きは、今もよく覚えている。画面手前よりゆっくりと奥へ進んでいく、宇宙ステーション?戦艦?がとてつもなくデカイのが印象的であった。そして、ピューーーンとすっ飛んでいく追跡シーンのスピード感は凄かった。この速さは以前には観たことがない驚きがあった。

そしてテクノロジーはどんどん進化して、特撮はさらに高度になっていく。 20数年後[エピソード何とか‥]でこのスター・ウォーズが復活して親子で楽しめる時代がやって来たと思った。しかし、高度な特撮になっているにもかかわらず、初めて観たときの感激はなかった。最初の映画では、熊のような宇宙人パイロットのチューバッカーや、宇宙人の集まるバーにいろんなのがいて面白かった。[エピソード]でも続々と出てきたが子供っぽくて、つまらなかったのは20年経って私が大人になったのか?頭が石になっているのであろうか。 子供のままに頭が石になっているのも。

あの素晴らしい[2001年宇宙の足袋]のシリアスなSFとはまた違って、アメリカン・コミックスの雰囲気をまさに映画化した感じの海賊映画アンド西部劇の宇宙版[スター・ウォーズ]。ワクワクする躍動感が懐かしい。

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