印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載077
欲望[Blow Up]イギリス 1966
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
主演:デビッド・ヘミングス、バネッサ・レッドグレーブ、サラ・マイルズ

アントニオーニ監督は[太陽はひとりぼっち][赤い砂漠][砂丘]などタイトルは良く知っているが、観たのはこの[欲望]だけである。それも1994年になってからである。もしこの映画を1967〜68年頃に観ていたら、私はファッション・カメラマンを目指していたかもしれない。当時この映画を観てカメラマンになった人も、少なからずいるだろう。モデルにまたがって撮影するシーンは印象的である。古い建物をスタジオにしているのも興味深かった。撮影のモデルのファションがツイギーのミニスカートなどファッションをリードしていた頃のロンドンの空気が感じられる。同時代に観たかった映画である。

日本タイトルはどうして[欲望]になったのだろうか?ポルノのような映画と思って観に行った人もいたかもしれない。原タイトルは写真の引き伸ばしを意味する[Blow Up]である。公園で盗み撮りした写真の隅に何か写っていた。さらに拡大すると、かなり粒子が荒れた心霊写真のような死体だった。といってもサスペンスやホラーではなく、ストーリーはとりとめない。パントマイムの男女がボールなしでテニスをするシーンを観ていると、イマジネーションを働かせろと促されているような気がする。

ライブハウスのシーンに若き日のジェフ・ベックとジミー・ペイジが出てくる。エリック・クラプトンやイギリスの代表的なロック・ギタリストが在籍した[ヤードバーズ]だが、68〜69年頃にはジミー・ペイジがリーダーになって[レッド・ツェッペリン]となる。ジェフ・ベックが苛ついてアンプをギターで怒突いていた。


連載078
マルホランド・ドライブ[Mulholland Drive] アメリカ・フランス 2001
監督:デイヴィッド・リンチ
主演:ジャスティン・セロウ、ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ、ロバート・フォスター

早いもので[ツイン・ピークス]TVシリーズから10年程になる。あの感覚にはまっていたツイン・ピークス中毒者にはおすすめである。その後の[ロスト・ハイウェー]は、やや強引で未消化な展開だったが、今回も謎の展開になっている。これは、TVドラマとして企画されパイロット版をつくったが、テレビ局から内容がテレビ向きでないと却下された。そのため、新たに撮影をした部分を加え、劇場用に編集がなされたようである。[ツイン・ピークス]のような連続ドラマのストーリーゆえに登場人物が多いと思うが、映画版としては意味がありそうで、なさそうある。それに鍵や箱の小道具にも惑わされ、複雑な編集によって、謎また謎の連続であるが、その謎が映画の魅力となっている。

どうして自分がこんなところにいるんだろう?いっしょにいる人は誰?どうしてこんなものを持っているんだろう?など不思議に思っていると、別の状況に変わっているというような夢の中の感じ。あまりストーリーの展開ばかりを追わないほうがいいと言いたいが‥‥つい謎に引き込まれ、解き明かされずにそのまま取り残される。 しかし、リンチ・ワールドに浸って、もっと見て続けて酔いたい気分。初めて映画館で観たときは、また最初から観たいと思った。

監督の女優のキャスティングはいつもいいが、今回はかわいいタイプと妖艶なタイプで、オーディションの最初のコーラスで口パクで演じていた女優も魅力的。音楽もいつものような60年代初めの頃の音で、オーディション・シーンでの最初のコーラスの曲は、女優コニー・スティーブンスが歌っていた1960年のヒット曲[シックスティーン・リーズンズ]そして、LAの泣き女が口パクで演じるロイ・オービソンの[クライング]。スペイン語で伴奏なしの独唱だが、これがエコーがかかって何とも魅惑的で新鮮。デイヴィッド・リンチ監督らしい雰囲気が良く出ている。

終わってからも、翌日もまた次の日も謎にはまり映画の辻褄を考えてしまう‥‥そんな状態にだった。自分なりの解釈で納得をしたが、見た人の解釈も聞いてみたい、内容について話をしたい。そんな映画である。[ブルー・ベルベット]とともに、私の大好きな作品である。

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