印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載079
初恋のきた道 中国 2000
監督:張芸謀(チャン・イーモウ)

主演:チャン・ツィイー、スン・ホンレイ、チョン・ハオ、

鮮烈だった[赤いコーリャン]に始まって[菊豆(ちゅいとう)][紅夢][活きる][あの子を探して]そしてこの[初恋のきた道][至福のとき]と私が観たものでは、どれも期待を裏切らない高い水準の作品をチャン監督は作り続けている。9月初めに[HERO]を観にいったが、アメリカ市場を意識した特撮を取り入れたつくりになっていた。アンダーソン君など目じゃない、本場のワイヤーアクションもふんだんに出てくる。最後の無数の矢が飛んでくるシーンは驚愕である。そして、色の鮮やかさが凄い。黄葉から紅葉に変わるシーンは息をのむ美しさだったが、劇画的アクション映画はあまり好みではない。

この頃は、三角関係とアクション、サスペンスと不倫、恋とコメディなどなど複合したものが多いが焦点がボケてしまいがちである。この[初恋のきた道]は最近あまり観られない、真っ向からの直球勝負の純愛映画である。そんなもんダサいし気恥ずかしい、もっと軽くおしゃれに複数の相手と恋愛したいというような風潮がある昨今。だからこそ、この素朴で一途な純愛に心打たれる。

都会からその村に赴任してきた若い先生が、張りのある声で朗々と本を読むのを毎日校舎の外から聞く村の娘(チャン・ツィイー)。先生は村の各家庭で順番に夕食をごちそうになることになっていて、彼女のうちにもやって来る。先生に喜んで貰おうと、貧しく質素な生活のなかでできる限りのもてなしをしようと張り切る彼女。玄関で先生の訪問を待つシーンで、先生を迎える時の笑顔は最高である。先生だけでなく誰でもノックアウトである。[グリーン・デスティニー][HERO]では、全く違う表情、キャラクターを見せるチャン・ツィイー。その太陽の笑顔と一途な心に熱い眼差し、これは演技?流石、女優である。

彼女の願いで、昔のしきたりに従いうちへ帰るときに、教え子達がたくさん集まってくる最後のシーンは、先生冥利につきる。初恋の来た道を通って彼女の待つ家へ帰るところは目頭が熱くなった。

 

連載080
あの子を探して 中国 1999
監督:張芸謀(チャン・イーモウ)

主演:ウェイ・ミンジ、チャン・ホエクー他子ども達

出演者に演技を求めず、ありのままでカメラの前に立つ。そのためには、そこの土地の人達に本人の役のままで出て貰う。この映画はそういうやり方でつくられた。だだ、主役等の数人の子どもはオーディションで選ばれているが、全くの素人である。その子ども達はテレビの影響で演じようとするが、監督はテレビのまねをしないよう、口を酸っぱくして言っていた。

最近、この[あの子を探して]のメイキングのDVDを観たが、興味深かった。 出演者は素人だし、村でのロケ撮影でお金がかかってないようにみえるが、フィルムをかなり回したそうだ。村の人達や子ども達が、台詞を言うのに間違えたりして何度もやり直す。フィルムを00分回すと村人の年収分のお金がかかるというようなことを言うと、プレッシャーがかかって余計に固くなるので、監督は一切口にせず我慢強く撮りつづけたそうである。

村の小学校の担任が、都合で1ヶ月の休暇をとることになり、代用教員として来たのは、生徒より少し年上の中学生ぐらいの女の子だった。生徒全員が欠けることなくまとめてくれたら、お金が貰えるという条件。当然、腕白坊主が街へ行ってしまう展開となるが、生活のかかっている彼女としては、大きな問題。街へはバスに乗らなければ行けない。実際、撮影は北京から車で3時間かかる農村で行われた。彼女は一生懸命考え、子ども達に授業をする。一つ運んで0元の煉瓦を生徒00人が何回運べばバス代の000元を得ることができるか?そして、小学生みんなで煉瓦運びの仕事をする、この実践的な身に良く付く授業がすばらしい。

街での撮影の多くは車からの隠し撮りで行われたそうだ。用意された車を見て、監督は「何でもっと普通の目立たないのにしないんだ」と怒っていた。街へ出てきたその女の子が、テレビ局の入り口から出てくる人みんなに「局長さんですか」と聞くシーンは、そうやって撮られた。テレビ局の入り口で何日も粘り強くチャンスを待つ姿がいじらしい。初めはお金のためだったあの子を探すことも、いつの間にか彼の身を案じる気持ちに変わっていく。

子ども達が喜んでいる笑顔は、観ているこちらもうれしい。みんなが、好みのカラーチョークで黒板に思い思いの言葉を書く。省略されて分からない漢字や日本では見かけない漢字もあるが、だいたいは読める。これを見ると中国と日本は繋がっていると思う印象的なシーンである。

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