[天国の口、終わりの楽園]
アルフォンソ・キュアロン監督
(メキシコ)

ハリウッドで1997年[大いなる遺産]のリメイクを監督したA・キュアロンが、メキシコへ帰って撮った映画。メキシコ本国では昨年最大のヒットを記録。ハリウッド映画をおさえて、2001年度年間興行収入No.1だったそうである。何がそんなにメキシコの人達の心を捉えたのだろうか? 高校生と若い人妻が本音で語り合う下ネタ・オンパレード。過ぎ去った青春の甘美な夏を高校生に託して見る2時間の夢。女性から見れば、はち切れそうなラテン・ボーイズとのアバンチュールの旅の夢。自分の事を心に長く留めて欲しいと願い、忘れがたい思い出をつくることに共感したのであろうか。

メキシコシティに住む、二人の高校生は、何不自由のない生活を満喫している。頭のなかは、90%はセックス、9.9%はドラッグ、0.1%が勉強のような夏休み。ある日、パーティで知り合ったスペインから来た人妻に、メキシコの南に「天国の口」という美しいビーチがあると、思いつきの話をする。暫くして、人妻から「天国の口」に行こうと誘われ、時間とエネルギーを持て余す高校生は即OK。彼女には現実から逃避したい秘密があった。

メキシコの地方の村の風景、食堂、安宿、村人との交流など、私自身もドライブをしている気分を感じる。埃っぽい砂漠を走り続け海が見えたときは、「あぁ、海だ!」と心の中で叫んでいた。海水浴客もいなくて何もない海だが、それがかえって美しい。2年も海に入ってない私は、彼らが泳ぐ姿を見て心が解き放たれた。美しい映像は[赤い薔薇ソースの伝説]1992、[彼女をみればわかること]1999のエマヌエル・ベツキー。海の家のようなところで、ぐでんぐでんに酔った三人がフィフティーズ・スタイルのジュークボックスから流れるメキシコのポップスで踊るシーンも印象に残っている。

大阪はスカイビルの梅田ガーデンシネマで10月11日まで上映中。

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載055
博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか[Dr.Strangelove ; Or, How I learned to stop worrying and love the bomb]UK & USA 1964
監督:スタンリー・キューブリック
  
主演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット

私は戦争映画は好きではない。中でも戦争アクション、特にハリウッド製は敵国兵士を虫けらの如く撃ち殺す勇敢でかっこいい?アメリカ兵士を賛美して、強いアメリカはどうだとばかりに見せつける。気のせいかテロの後、戦争映画が増えているようだ。強いアメリカを見せて合衆国国民の愛国心を強固にしようとしている。星条旗もよく売れているそうである。

テロから1年。初めてアメリカ本土に攻撃を受け、多くの犠牲者、家族を失った人達、心や体に傷を受けてしまった人達がいる。大変気の毒で悲しい出来事である。かって57年前、アメリカは原子爆弾をHiroshima, Nagasakiに投下した。ナチスの大量虐殺に匹敵する行為である。何十万人の人が亡くなり、非常に多くの人達が家族を失い、長い闘病生活を強いられ、ショックな体験をして心の傷をずっと今も引きずっている。人はされたことは決して忘れないが、やったことは忘れがちである。アメリカはHiroshima, Nagasakiのことを忘れてはいないだろうか?される側の痛みが解っただろうか?同じく、かって日本がアジア諸国に行ったことも、忘れてはいけないことである。

いきなり大きな岩の話になってしまったが、この映画は核兵器について、こんなんになったら怖いということをコミカルに表現している。キューブリック監督は狂気をよくテーマにしているが、これも米ソ冷戦時代に気が狂った司令官が、大統領の命令もなく勝手に○○作戦を発令してしまう。指令を受けた数台の爆撃機は「マジかよ!」と思いつつソ連に向かう。爆撃機には水爆を積んでいる。ソ連のレーダーにひかかったら、直ぐにアメリカにも核爆弾が飛んでくるように配備されている。どうするの‥という話。

人の良さそうなイギリスのジェントルマンな大佐。ソ連攻撃を何とかくい止めようとテキパキ?と対策をとる大統領。すぐに右手を前に挙げそうになる偏執狂的ドイツ人科学者を、ピーター・セラーズがそれぞれを巧みに演じている。最後にきのこ雲とともに[また会いましょう]という美しいメロディの歌が流れる。地球全面核戦争で人類や生物が死滅したら、また会えるのは○○億年?後である。長い長い意味不明のタイトル、フリーハンドで描かれたタイトルやキャスティングの文字も普通でないキューブリック監督のブラック・コメディである。ビジネスとして当たる映画が最優先のハリウッドは、戦争をかっこよく見せる戦争アクション映画より、この映画のように、戦争の愚かさをテーマにしたものにもっと目を向けるべきである。

世界の保安官は、危ない無法者を「悪の枢軸」呼ばわりして、先制攻撃をすると言っている。普通、無法者が銃を抜いてから保安官が素早く抜くものである。どうも、保安官はやけに拳銃を撃ちたがっているようである。武器を売る悪徳商人と手を組んでいるのであろうか?核の武器は保安官みずから捨てて、危ない無法者に「隠し持っているものを捨てて、素手で来い」というべきではないだろうか(ちょっと映画の見過ぎなんちゃう)。攻撃をすれば、またやりかえされる終わりのない悲惨な事態が繰り返されるであろう。無法者と見誤って撃たれたり、流れ弾に当たって被害を被るのは一般市民である。


連載056
ピンク・パンサー2[The Return Of The Pink Panther] USA 1975
ピンク・パンサー3[The Pink Panther Strikes Again] UK 1976
監督:ブレイク・エドワーズ

主演:ピーター・セラーズ、ハーバート・ロム

ピーター・セラーズといえば、もうひとつこの映画を思い出す。クルーゾー警部のドジの連続、ドジぶりが面白かったと思うが、内容はほとんど覚えていない。コメディはその時にワッと笑って楽しんでしまえば、後にあまり残らない。人を笑わせるのはなかなか大変だが、芸術性やシリアスなメッセージで人の心を打つという事があまり無いので、ハッピーな気分にしてくれるけど軽く見られているところがある。 アカデミーやカンヌなどの作品賞にあまり挙がらないのは、そんなところにも理由があると思う。

そういうこともあってか、アメリカでアカデミー賞の一足先に発表されるゴールデン・グローブ賞にはドラマ部門とミュージカル・コメディ部門に分けてある。ちなみに2001年度のゴールデン・グローブ作品賞ミュージカル・コメディ部門は[あの頃ペニーレインと]であった。しかし、この映画のどこがミュージカルやコメディなのかと首をかしげてしまう。ローリング・ストーンズ誌のライターになった少年が、彼が気に入った無名のバンドのツアーに同行、バンドのメンバーやそのグルーピーの女の子との交流を描いたストーリーである。バンドの演奏シーンがあるので、ミュージカルということなのであろうか?私の思うミュージカルとはかなり違っている。

別に賞に関係なくても、自分がいいと思えばそれが自分のアカデミー賞である。笑いは次の予測がハズれたり、超えているのが面白いのだが、ほんとに笑えるものは少ない。クルーゾー警部の普通に何気ない様子で、ドジをやるのが可笑しかった。そして、彼のドジぶりに頭にくる署長もグーだった。ピンク・パンサー2か3か忘れたが、署長が歯医者で麻酔と間違えて笑いガスを吸わされて、歯を抜かれるシーンがあった。虫歯と間違えて良い歯を抜かれ、痛くてもヘラヘラ笑いながら怒るシーンは爆笑だった。

クルーゾー警部の家に東洋人の執事がいて、確か加藤という日本人がKATOHの英語読みでケイトと呼ばれていたと思う。クルーゾーが家に帰ると、執事の彼はいつもどこかに隠れていて急に襲ってくる。そして、空手の戦いが始まる。クルーゾー警部は家でも訓練を怠らない、仕事熱心な警察官である。イントロはピンクの豹のアニメーションが楽しく、ヘンリー・マンシーニのサントラもお洒落でよかった。
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