[アメリカン・ドリームの世紀展]

自国の利益のためには、いろいろ要求を突き付けてくる身勝手な今のアメリカは嫌いだけど、50年代60年代のアメリカン・カルチャーは大好きである。アメリカが最もアメリカ的なイメージに輝いていた頃に生み出されたものが集められている。アメリカン・カルチャー好きにはうれしい展覧会であるがジャンルが広くそれぞれが少し物足りない。

一番気に入ったのは56年頃の全盛期のプレスリーのヴィデオ。60分もあるので全部は見ていないが、歌うときのアクションがカッコイイ。エド・サリバン・ショーではカッコ良すぎて下半身は映されなかったそうだ。ジャズのヴィデオも流すか、アメリカ製のオーディオのマランツやJBLで迫力の音を聞かせてほしいものである。映画[イージーライダー]のぴかぴかのチョッパーのバイク(再製作)やキャデラックもある。私の好みとしては、62年型サンダーバード・スポーツロードスターを持ってきて欲しかった。大量生産の始まりのT型フォードも展示されている。

アートに関しては60年代ポップアートばかりで50年代の抽象画が欠落している。これは片手落ちである。ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコ、ロバート・マザーウエルあたりを展示して欲しい。アンディ・ウォーホールのマリリン・モンロー等は見飽きていて新鮮味がない。私の好きなタイプではないが、ジェームス・ローゼンクイストの絵は離れてみると写真のよう。アメリカ生まれの石元泰博のシカゴの写真が良い。もっと見てみたい。エアーライナー等の模型は美しい昔の未来。フィルコ社のTVはモダンなグッドデサインである。

車や家電などのTVCM。そして子供の頃見た憧れのTVドラマ[奥様は魔女][うちのママは世界一][名犬ラッシー]などのさわりが当時のTVで見られる。今見るとノーテンキな白人至上臭さが鼻につく。生活用具は大量生産により誰にでも手にできるようになった。しかし、私達も毒されてしまっているが、次々と新しいものに目移りする物欲大量消費の使い捨てにより、ゴミを大量生産している。 
3月25日(日)まで兵庫県立近代美術館で開催中。

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、スリラー、ウェスタン等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。


連載017 
ブルー・ヴェルヴェット[Blue Velvet]USA 1986
監督:デヴィッド・リンチ

出演:カイル・マクラクラン イザベラ・ロッセリーニ デニス・ホッパー ローラ・ダーン

子供の頃、学校の帰り好きな女の子に言葉をひっくり返して「ヘンタイキスキス」なんて言いていた。デヴィッド・リンチはまんまの「ヘンタイスキスキ」である。青空を背景に白いペンキ塗りの塀があり、かわいい花が咲いている。お父さんが花にホースで水を撒いているが、めまいがして倒れる。ホースは生きもののように動きながら青々とした芝に水を撒き散らす。そこへ犬が走ってきて水を飲むイントロの映像が好きで頭に残っている。

お父さんが倒れるという不安を感じさせながらも、こんな平和な住宅地で普通こんなことはないとは言い切れないが、草むらに切り取られた人間の耳が落ちているというギャップにいきなり引き込まれる。耳にはたくさんの蟻がたかっているという感じもD・リンチらしい。

1956年の[ジャイアンツ]では好青年を演じていたD・ホッパーは1969年の[イージーライダー]ではアウトローのヒッピーを演り、この映画ではやくざな変質者で現れ、見るたびにその変貌ぶりに驚かされたが、その後の彼のキャラクターが確立された映画である。興奮すると酸欠になるらしく酸素マスクを付け「マミー!」と叫びながら女を犯すシーンは(おおっ、なんやこいつは)という強烈な映像である。それを好奇心の強い若者がクローゼットから覗くシーンと変質者の車に乗せられて何処かに連れていかれるシーンは不安な気持ちを凄く感じさせてうまい。

相手の女役はI・ロッセリーニ。あまり似ていないが、イングリット・バーグマンの娘。桃というより赤く熟れきった、ねっとりとした味と香りのメキシカン・マンゴのよう。マスクを付けてるところを見るなと思いっきり叩かれるが、それすらも感じているようなマゾヒズムの妖しい魅力。クラブ歌手の彼女が歌う[ブルー・ヴェルヴェット]はオリジナルのボビー・ヴィントンのクリーンな感じと違って、美しいメロディにデカダンな雰囲気が加わり妖艶なスロー・バラードになっていてなかなかいい。D.リンチ監督は最近、何を思ったか[ストレート・ストーリー]というピュアーな違うタイプを撮っている。それも良かったが、この映画が彼の今までの中でいちばん好きである。

連載018 
欲望の翼[Days Of Being Wild]香港 1990
監督:王家衛(ウォン・カー・ワイ) 

出演:レスリー・チェン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオン、マギー・チャン

「A年B月C日D時、君といたE分間を僕は決して忘れない」気障な台詞を耳元で囁いて女を弄ぶけしからん奴レスリー・ウラヤマシイ・チェン。彼が忘れられなくて家の前に立ち続ける女。パトロール中に彼女を度々見かけて好きになる警察官など。映画によくあるテーマ、片想い。5人の若者がそれぞれに想う人がいながら、かなわぬ恋、せつない心。二人の女から想われながらも、主人公はまだ見ぬ実の母を想い続ける。

[恋する惑星] [天使の涙] [ブエノスアイレス]と連続ヒットを飛ばしているウォン・カー・ワイ監督。私が最初に見たのはこの映画である。撮影は監督と名コンビのクリストファー・ドイル。[恋する惑星]で見せてくれた手持ちで追いかける流れる映像はカッコ良く美しかった。この映画ではグリーンの色調で香港の蒸し暑さとやるせなさを表している。また、映像と音楽をシンクロさせるのが抜群の監督が選んだのは、60年代という設定で懐かしいラテンである。今、ラテンが復活しているが、60年代には日本でもよく流れていたようである。香港とラテンはピンと来ないが同じように流行っていたのであろう。

一番印象深いのは、彼が養母から何とか実母の居場所を聞いて会いに行くところ。フィリピンのどこか大きな屋敷。しかし、実母は会ってくれなかった。窓から覗く母に顔は見せまいと振り返らずに、無念を背に椰子の並木道を歩く。カメラはこの背中をを追いかけて撮るが、映像がスローモーションになって、ロス・インディオス・タバハラスの哀愁漂う美しいギターの[Always In My Heart]が流れる。せつなさが増してもっと見ていたいシーンである。

香港とフィリピン、以外と近い距離である。地図で見ると大阪-沖縄ぐらいである。シドニーからの帰りに経由の香港でおいしいものでも食べようと一泊した。ペニンシュラ・ホテルの前の広場をスターフェリーに向かって歩いていると、凄い数の女の人がいた。座り込んだりして、なかにはお弁当を拡げている。そういえばテレビで観たことがあると思った。待ちに待った日曜日に友達に会ったり、情報交換に集まるのであろう。フィリピンから家政婦として出稼ぎに来ている人達である。世界の中のひとつの断片を見た感じがした。

片想いは寂しい。相思相愛であれば、生活がどうであろうが人生は薔薇色である。しかし、お互いが思いやって向き合ってないと色褪せてしまう。恋をして勇気づけられ元気になりたいが、たいがい片想いである。 近日、ウォン監督の新作[花様年華]が上映される。楽しみである。

What's News