印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載031
無能の人 日本 1991
監督:竹中 直人 

主演:竹中 直人、風吹ジュン、三東康太郎、山口美也子、マルセ太郎、神戸 浩

劇画作家つげ義春の原作は見ていないが、ユニークな話である。主人公は河原に小屋を建て、店を出している。何を売っているかといえば石で、仕入れの石はそのまわりにゴロゴロあるものである。しかし、道路脇の畑でとれたての新鮮なキャベツを直売しているのとは違って、石にタイトルというか名前があるということである。万が一買う人いれば、石から感じられるイメージに基ずいたネーミングという行為を買うということであろうか。主人公はトイレで力みながらネーミングをしていた。違う見方をすれば、これは、画廊では出来ないインスタレーションようなものである。また、マルセル・デュシャンが1917年に男子用の便器に偽名サインを入れ「泉」というタイトルで、史上初のレディ・メイド・アートとして出展して物議をかもしたのを連想してしまう。

石の愛好者が集まってオークションが開かれる。彼も出品してオークションにかけられ、値がつけられ段々つり上がっていく。もうこのあたりで潮時かなというとき、興奮してきた彼の奥さんがもう一声「ン万円!」と叫ぶ。出品料と自分の持ってきた石に落札の手数料を取られて持って帰る石は数倍の重さに感じられるだろう。悲しくもおかしい場面である。

出演者の中に神戸浩という人がいるが、ひっくり返ったような声で、ちょっと呂律がまわらない台詞、演技ではなく素のままだろうと思うが、面白いキャラクターである。その他、井上陽水や本木雅弘をはじめ多彩なゲストがちょい役で登場しているが、私はちょっとしか解らなかった。

ロケーションも東京都庁が近くに見えるところなのに、井戸があったりしてすごくレトロな雰囲気があり不思議な感じである。多摩川の川の中の石を拾うシーンで鉄橋を電車がすれ違うが、白っぽい同じ色なので重なって長い電車がすーと短くなっていく。マジックを観ているような感じでもう少し長く見せてほしい。川で立ちションしているところに、女の人が訪ねてくるがなかなか終わらない、「ごゆっくり」と言われてからもしばらく出続けるなど、いろいろおかしいショットを挟んで、竹中監督の初作品は着眼点がいいナンセンス映画で好きである。


連載032
パルプ・フィクション [Pulp Fiction] USA 1994
監督:クエンティン・タランティーノ

主演:ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ブルース・ウィルス、ユマ・サーマン、ハーベイ・カイテル、ティム・ロス

梅田新道の東映パラスの階段を上がって2階のロビーに行くと、エネルギッシュな音が聞こえてきた。オリエンタルな響きが不思議な新鮮さで、サーフィン・ミュージックの元祖といわれているディック・デイルの[ミザルー]だった。ほとんど忘れられていた60年代始めの曲が映画の雰囲気に合ってカッコイイ選曲だと思った。イントロのキャストの名前が出るときにこの曲が流れる。カーラジオのダイヤルを回すとクール・アンド・ザ・ギャングの[ジャングル・ブギー]になるのもいい。

タランティーノは監督をする前にクリスチャン・スレーター主演の[トゥルー・ロマンス]の脚本を担当しているが、父親役のデニス・ホッパーとマフィア役のクリストファー・ウォーケンのシシリー人の血は黒いという会話。そして、監督をした[レザボア・ドッグス]ではカフェでのチップについてやマドンナのヒット曲[ライク・ア・ヴァージン]の解釈など、たわいもない会話のやり取りが面白い。 この映画でも車を走らせながら、オランダ帰りのチンピラ役のトラボルタが「アムスじゃMチェーンのチーズ・バーガーのことをロイヤルチーズというんだぜ。フレンチフライはケチャップでなくてマヨネーズなんだぜ」等と話していた。やたらと半額になる美味くもないハンバーガーの事などどうでもいいんだが、こういうとりとめの無い会話を脚本に入れるのが彼のスタイルだ。

ハンバーガーといえば、日本の子供はTVCMに踊らされて、すっかり味覚音痴のアメリカン・スタンダード化している。子供の時に好きなものは大人になっても好きである。オヤジになってもうれしそうに何十年も食べ続けるのであろう。アメリカの思うつぼである。これで日本をはじめとして、世界への牛肉の輸出はこの先何十年も安泰であろう。心配なのは、アメリカの牛は自国の遺伝子組み換えのコーン等の餌を食べているんじゃないだろうか?という事である。

ボスから若い奥さんのデートのお伴を頼まれドラッグでトラブル話。落ち目のボクサーがボスに八百長を頼まれたが、裏切って勝って逃げる話。車のなかでピストルが暴発し血の海になるが、掃除屋がテキパキとかたずける話。レストランの強盗の話の4つのストリーがつながっている。編集の妙というか入り組んだ路地で迷って歩いていると、もと来たところに出てきた感じ。面白いアイデアである。トラボルタ復活となった映画。

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