[おいしい生活] ウディ・アレン監督 (USA)

いきなり大金持ちになると、当然夢見ていた事を実現しようとしたり、自分に欠けているものを満たそうとする。しかし、人はこんなふう変わってしまうんだろうか。貧乏な頃は金持ちになったらフロリダでのんびりと暮らそうと思っていたのに、ひょんなことでハンドメイド・クッキーがバカ売れ、大きくなった自分の会社を動かしていくためにニューヨークで働かなければならない。仕方がないので、マンハッタンで高級コンドミニアムかアパートに住む。お金をかけてヨーロッパのアンティークながらくたを家いっぱいにデコレーションして、アニマル柄やロココ調の最悪のインテリア。フレンチのシェフを雇うが、カタツムリやカエルや鴨や兎などのご馳走にうんざり。亭主は食べ慣れたミートボールのスパゲッティやハンバーガーを食わせろと叫ぶ。

曲がりなりにも衣・食・住が満たされると、上流志向の奥さんは知性を求める。好きな音楽やアートや文学であれば楽しいのだが、知性だからとクラシック音楽や宗教画や純文学や前衛ダンスなど退屈そうなものばかりをカジる。そして、ハイソのパーティーに出ては話したくもない人とつくり笑いを浮かべ、インテリぶって知性とやらの退屈そうな芸術について小難しいボキャブラリーを並べる。夫がバカに見えインテリな男によろめいたりしてしまう。

これはウディが成り金のニューヨーカーを皮肉った、愉快な毒舌の応酬のコメディー。アメリカ人というよりニューヨーカーはヨーロッパ文化に弱い。ジャズやロックや抽象画やポップアートやビート・ジェネレーションの詩や文学などがあるのに、自分にないものを欲しがるものなのか。日本も同じだが、もっとひどいかも。 ウディ自身は出演していなかった[ギター弾きの恋]同様、愛がテーマ。お金より大切なものについてのメッセージ。この映画では元気にダメ男ぶりを発揮しているが、以前と比べるとひつこさが薄くなっている。やはり、年とともにそうなっていくのであろうか。幸せをもたらすのはお金 ではなく、心のもちようである。
大阪は梅田ガーデンシネマで上映中

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、ホラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。

連載033 
ブリット[Bullitt]USA 1968
監督:ピーター・イエーツ
主演:スティーブ・マックイーン、ジャクリーヌ・ビゼット、ロバート・ボーン

ストーリーは全く覚えていないが、サンフランシスコのあの急な坂を猛烈なスピードで走ると言うより、飛ぶようなカーチェイス。凄かった。坂を下りてくると横の通りと交差するところで一瞬見えなくなり、そしてビュンとジャンプしてくる。これを繰り返して下まで来る。こんな街の中でのロケ撮影に協力的なのはさすがアメリカである。街の北東部で北と東は海、南はマーケット・ストリート、西はヴァンネス・ストリートに囲まれた2〜3キロ四方の中心街のさらに真ん中のエリアが急な坂である。そのエリアのテイラー&ポスト・ストリートあたりで3〜4カ月暮らしたことがあるが、歩いてみると登りはほんとに大変である。だから、バスではなくケーブルカーなのだろう。

刑事はスティーブ・マックイーン。カッコイイ人だった。車は当時アメリカの若者に最も人気のあったフォード・マスタングだった。サウンドは、ラロ・シフリンによるスピード感のあるジャズである。これもテープに入れていて、今も時々聞いている。これらの要素が合わさって、クールなイメージが記憶に残っている。 私が彼の映画を初めて見たのは、中2の夏休みに東京に遊びに行ったとき、銀座で映画に連れていってもらった。映画館の上に[荒野の7人][大脱走][鳥]の大きな手書きの看板があった。「どれがいい?」と聞かれてバイクでジャンプする看板を見て[大脱走]にする。単純に見た目がカッコ良かったのだが、今思えばその時[鳥]を見ないでよかったと思う。その他[荒野の7人][シンシナティ・キッド][華麗なる賭け][ゲッタウェイ]でもキマッテイタ。

このサンフランシスコの刑事は[ダーティ・ハリー]へ受け継がれ、激しいカーチェイスは[フレンチ・コネクション][バニシング・ポイント]など後の映画に影響を与える。映画を見てからしばらくして、私は彼と同じような紺のハイネックのセーターにヘリンボーンのツイードジャケット、ガンベルトはしていなかったが、ベージュのコートを着て街を歩く影響されやすい奴だった


連載034
サム・サフィ[Sam Suffit]フランス・日本 1992
監督ヴィルジニ・テヴネ 
主演:オーレ・アッテカ、フィリップ・バートレット、ロジー・デ・パロマ

目まぐるしい変化とテンポの速い現代社会では、仕事をする程にストレスが起こりがちである。そんなときに映画を見るとすれば一般的には、ほんとに笑えるものは少ないが、笑い飛ばしてスッキリとして何も残らないコメディ。よりリアルなSFX映像で真に迫った展開をマジにやるほどに、辻褄があわなくなり「なんで、そんなんで助かるんや、おかしいやん」と思わせるが、都合よく事が進むハリウッド大作映画の激しいアクションで主人公が危機一髪で生き延びる痛快活劇。心満たされない辛い恋が、やがて花開くハッピーなラヴストーリー。または、ハードな人生をガンバル主人公に感情移入して、苦しんでいる人は他にもいるんだと納得して、自分の生活はささやかながら幸せだと感じて心が癒される、などなど。

その他に、この[サム・サフィ] のようなタイプもある。たとえ一生懸命に作っていたとしてもそんなことを全く感じさせない、力みのない、ストーリーもシリアスでなくノーテンキな感じのものは、見る側も過剰な期待もなく構えずに気楽にくつろぎ楽しめる。それにこのフランスの女性監督のセンスは前作の[エリザとエリック]と同様にオシャレである。

自由な生活三昧にウンザリしているストリッパーの主人公は、真面目な生活が刺激的だと考える。ゲイのカップル宅の住み込みの家政婦や、区役所の窓口の仕事をしたりして彼女なりの真面目な生活ぶりが面白い。犬を散歩させるようにビニール袋に入れて連れ歩く、金魚の散歩というのがおかしい。水槽にはミニチュアのベッドやテーブルなどセットされていて間仕切りの壁もあり、金魚が寝室からリヴィングへ空いたドアから行き来するアパートの生活も楽しいアイデアである。派手なフレームに納税通知書や給与明細等を貼付けて何気なく壁に飾ったものが、訪ねて来た画商に気に入られて個展を開くという話にひろがる。気の持ちようと好奇心で人生はこんな風に楽しめるといういい見本である。

What's News

what's news