映画誌[キネマ旬報]恒例の2000年ベストテン発表。

洋画1位スペースカウボーイ(クリント.イーストウッド監督) 2位オール・アバウト・マイ・マザー (ペルモ・アルモドバル監督、スペイン) 3位あの子を探して(チャン・イーモウ監督、中国)
邦画1位(阪本順治監督) 2位ナビィの恋(中江裕司監督) 3位御法度(大島渚監督)

読者の選出による洋画1位アメリカン・ビューティ(サム・メンデス監督) 2位あの子を探して 
3位サイダーハウス・ルール (ラッセ・ハルストレム監督) 
邦画1位 2位雨あがる(小泉尭史監督) 3位ナビィの恋 
あまり書くと雑誌が売れなくなると怒られるので、ベスト3だけ書いときます。もっと知りたい場合はメールをください。

私の場合、見た映画が少ないので、ベスト3しか選べませんが1位ストレート・ストーリー(デビッド・リンチ監督)
2位ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(ビム・ベンダース監督)3位アメリカン・ビューティ
でした。

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、スリラー、ミュージカル等々好みのタイプでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います。お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。


連載015 
髪結いの亭主[Le Mari De La Coiffeuse]フランス1990
監督:パトリス・ルコント

主演:ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ 

少年の頃、友達のYクンの家は美容室で、表から入るとお母さんと一番年上の姉さんに「あら、もりたんクンいらっしゃい」などと声をかけられ、挨拶をしてずっと奥へ行くと裏庭があった。そこには手を入れた鉢植えがあり、小さい池だったが鯉が泳いでいた。その側でお父さんがノコギリでギコギコしてはりました。そんな趣味的な生活が子供心に羨ましかった。

主人公は少年の頃からしょっちゅう髪を切りに行っている。シャンプーやローションの香りにつつまれ、チョキン、チョキンと心地よい音を聞きながら切ってもらう。そんなことより、店のおねえさんがノーブラで暑いときはボタンを外していて、ちらっと見える大きな胸を押し付けられながらやって貰えれば、行きたくなるのは当然である。

彼はいくつの理髪店を訪れたのだろう。パリの理髪店ガイドの本を出せるぐらい知っていると思うが、ある日初めて行った店で、大胆無恥のいきなりプロポーズがすんなり受け入れられ結婚。子供の頃からの念願の髪結いの亭主となる。現実は映画のようにはいかないが、気に入ったら思い切って言ってみるもんである。「この人何?変な奴」と思われるだろう。以来10年変わらず、光がふわっと差し込む店でシャンプーやローションの香りにつつまれ、雑誌を読むのんびりとした毎日。お客がシャンプーしてる隙に、彼女のスカートの中に手を入れて太ももやお尻を触ったり、ときおりアラビアのポップスのテープをかけ奇妙なダンスを踊る幸せな日々だった。

ビーチサイドに面したカーテン越しに光がふわっと差し込む海の見える店で、ジャズスタンダードの女性ヴォーカルやボサノヴァの曲を流して、ほのかなコロンと腋の匂いのまざった官能的な香りに酔いしれ、耳たぶを軽く弄ばれながらシャンプーしたり髭を剃ってもらう。口移しのコニャックか、ビタースイートなチョコレートをゆっくり溶かしながら味わえば五感が満たされる至福のひとときである。そのあとテラスでコーヒーを飲みながら空に浮ぶ曇や海を眺め、ときおり仕事を手伝い、サンセットのビーチをふたりで散歩したりする。「 夢見る髪結いの亭主ライフ」zzz おっと、よだれが。

全体に黄色いフィルターが使われ、逆光気味に光が柔らかく撮られて彼女の微笑みが、優しく包みこんでくれるような、なんとも幸せな気分を醸し出していた。その中に、アラビアの音楽とあの踊りがスパイスのように効いていて良かった。P.ルコント監督はフランス映画らしくどの作品にも官能の匂いを漂わせているが、最初に見たこの映画が一番好きである。


連載016 
俺たちに明日はない[Bonnie And Clyde]USA 1967
監督:アーサー・ペン 

出演:ウォーレン・ビーティ、フェイ・ダナウェイ、ジーン・ハックマン、

真っ赤なルージュひいた色っぽい唇がいきなり目に飛び込んでくる。そして、その唇は素っ裸でベッドに寝そべっている。スレンダーな若きフェイ・ダナウェイのセクシーショットのイントロに若き日の私は引き込まれてしまっていた。

これは60年代後半からのアメリカン・ニューシネマのはじまりの映画だった。大毎地下劇場を知って行き始めた頃の1969年2月に見ている。2本立てのもう一つはビスコンティの「異邦人」だったがほとんど覚えていない。時はミニスカートが全盛だったが、ボニーのベレー帽にロングスカートがカッコ良かった。クライドのクラシカルなスリーピースのスーツも新鮮に見えた。しばらくして巷に三つ揃スーツが流行って、私も黒い三つ揃スーツを短足で似合っていなかったが時々着ていた。それと音楽、強盗をして逃げるときに流れるノスタルジーな、フォギーマウンテン・ブレイクダウンのバンジョーの演奏が30年代の車などの映像と ピッタリ。

ガソリンスタンドに立ち寄ったところで、若い男に「俺達は銀行強盗だ。お前には出来ないだろう」てなことを言う。その男C.W.モス(M.J.ポラード)は柱を叩きながらニタニタ笑って、そしてレジから金を鷲づかみにして車のシートにばらまく。彼をドライバーとして仲間に入れるが、強盗をして逃げるときドジな駐車をしていて追い付かれそうになり撃ち殺してしまう。逃げ込んだ映画館で、「このマヌケ野郎!」と頭を叩かれべそをかいてる彼のキャラクターがなかなか良い。

「ぴあ・シネマクラブ」の本によると誰が数えたのか知らないが、87発もの銃弾をバリバリ撃たれる。どういうふうに撮影しているのか、蜂の巣のように車や服に次々と穴があき、服から血を飛び散らしながらスローモーションで踊るように死んでいく。こんなに激しく撃たれるのは、当時以前には無かったと思うが、凄いシーンだった。

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