マルコヴィッチの穴 スパイク・ジョーンズ監督 (USA)

スパイク・ジョーンズと聞いて「ジャングル・フィーバー」の黒人の監督かと思っていたら、彼はスパイク・リーでこの映画はミュージッククリップを主に制作していた人で、初の長編映画である。トミー・リー・ジョーンズというのもいるなぁ。そんなことはどうでもいい。

売れない人形使いが妻に言われて生活のため仕事を探す。「手先の器用な人求む」というのを新聞で見て面接に行くが、そのオフィスが7階と8階の間の7と1/2のフロアーで天井が低くて屈んで歩くのに笑った。これはひょっとして、フェリー二好きで8・1/2にひっかけているかも。そのオフィスにある小さいドアを開けると穴があって、入っていくとそれが俳優マルコヴィッチの脳につながっていて15分間マルコヴィッチを体験できる。なんともナンセンスなシュールなストーリーが最高である。 私はマルコヴィッチの穴より柔軟な脳味噌のスパイク・ジョーンズ監督のほうに行ってみたい。それとも、ミラ・ソルヴィーノやウィノナ・ライダーが彼氏と「カモンハニー、うっふん」のときに彼女、じゃなくて彼の穴に入りたい・・・。「コラ、何を考えとんやずーっと壁の穴見て、次のところ読んで!」「エッ、何処ですか先生?」

後半話の展開がややこしくなって面白味が薄くなる。マルコヴィッチが自分の穴に入るあたりまでで、ナンセンスに徹したほうが良かったと思う。彼が自分の脳に入ると深い意識下のいろんな自分が見えて・・・ああ、ややこしい。レストランでいろんなマルコヴィッチがいっぱいのシーンはおかしかった。彼が自分自身を演じるというのが面白いが、キャメロン・ディアスも化粧もほとんどしないお疲れ気味の主婦役によく出演したと思うが、でもカワイイ。

この映画はユニバーサルなので、来春オープンの大阪ユニバーサル・スタジオにこのアトラクションを是非加えて欲しい。屈んだまま長時間並んで待つのは辛いけど、並びマッセマッセ。あとは帰りやすいよう梅田あたりで転んでも痛くないところに出てくるようにお願いします。

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、スリラー、ミュージカルなど、映画のタイプの好みでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載しています。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。


連載007 
市民ケーン[Citizen Kane]
USA 1941
 
監督:オーソン・ウェルズ 
主演:オーソン・ウェルズ ジョセフ・コットン

テレビでレポーターが奥さん、あなたにとって幸せって何ですか?と聞くとすぐに「お金!」「お金があったら何でも出来る!」。女の子には、あなたはどんな男性と結婚して幸せになりたいですか?と聞くとすぐに「年収1000万以上の男!」。どのツラ下げて言うとんじゃい!アカンこんな下品な言葉づかいでは彼女達と一緒になってしまう。お嬢様ご自身がどのようなおつもりで、おっしゃっておられるのでございましょう。噛んでしまう。生活していくうえで金はあるにこしたことはないが、何とか生きていけたらエエやないの。もっと大事なものがあると思うけど、金にしか興味がないのかこの拝金主義者!心優しい人や控えめな人を押しのけて自分だけが成り上がろうとするような卑しいタイプに多いい金持ちが、人格がどうであろうと偉いんか!この映画はそんな人に見てもらいたいが、猫に小判であろう。アカン、小判で喜んでしまう。

オーソン・ウェルズはこの映画を25才で監督、脚本、俳優、プロデュースまでやって制作した天才である。ローズバッド(薔薇の蕾。パソコンならではの文字、手では書けない)という言葉を残して死んだ新聞王ケーン。この言葉は何なのか。言いたいけど、ここはグッと我慢して呑み込んでおくが、ひょんな事で莫大な遺産を受け取り新聞社を始め、有り余る富と権力がありながらも・・・つきとめていくと彼の人生が見えてくる話。

第2次大戦の最中にこんなん創っていたんだアメリカでは。私が見たのは完成後46年を経た1987年だが、当時の斬新な映画だったというのが感じられた。パンフォーカスで手前のアップから奥までピシッとシャープな映像。パースをつけて距離感を強調したセットも面白い。しかしその後、オーソン・ウェルズは満ちあふれる才能を持ちながら「出る杭は打たれる」ようにハリウッドから締め出されてしまう。

近々、この[市民ケーン]の制作の様子を映画にした[ザ・ディレクター]リドリー&トニー・スコット プロデュースが テアトル梅田で。市民ケーンより前のオーソン・ウェルズを映画にした[クレイドル・ウィル・ロック]ティム・ロビンス監督で梅田ガーデンシネマで上映される。


連載008 
アメリカン・グラフィティ[American Grapffiti]
USA 1973
監督:ジョージ・ルーカス 
出演:リチャード・ドレイファス、ロン・ハワード

Happy birthday, Happy birthday baby oh, I love you so・・・で始まるクレスツの[Sixteen Candles]が流れてきて、黄昏から夜に変わろうとするコバルトブルーの空に輝くMels drive-inのネオンの暖かい白色の光。店の前にはフィフティーズのアメ車が止まっている。短いがこのショットが大好きである。ビデオを持っているのでこの映画は何度も見ているが、見るたびにうっとりしてしまう。1962年カリフォルニアの小さな町で、高校を卒業した友達が店の前に集まってくる。その中の一人カートは明日はいよいよイーストコーストの大学へ旅立つという希望と不安の入り交じった前夜の一晩の話だが、50年代〜60年代始めのヒット曲がウルフマンジャックのDJとともにたくさん流れて楽しい。

アメリカ映画を見ていて羨ましいのが、クリスマスや卒業の頃のダンスパーティーだ。スローな曲で好きな子と抱きあって踊るなんて、本当にいい思い出である。この映画にも前生徒会長とチアリーダーが呼び出されてみんなの前でプラターズの「煙が目にしみる」の曲にのって踊るシーンがある。同窓会、結婚式でもアメリカ映画ではダンスをしているのをみかける。こういった習慣で自然に覚えて踊れてしまうのであろう。旅先のリゾートホテルなどで、アメリカのおじいちゃんとおばあちゃんが楽しそうに踊っているのを見かけたりする。

私の場合、高校生の頃キャンプや運動会でフォークダンスをした記憶がある。心をときめかせて好きな子が来るのを待って、ようやく手に触れて見つめあって心臓がドキドキする間も無く16秒足らずで次へ行ってしまう。音楽はダサイし、つまらなかった。最初に勤めた会社で、梅田のどこかの場所を借りて生バンドの演奏でクリスマスパーティーがあった。その頃のダンスミュージックはオーティス・レディング[Dock Of The Bay]、テンプテーションズ[My Girl]、サム&デイブ[Hold On]などR&B のナウいビートが流行っていた。そういう曲はノリノリでOKなのだが、スローの曲になると全くダメでイスに座って見ているだけの状態だった。そんなときに同じ課の先輩のM子さんにステップを教えてもらった。足の運びに慣れるのに一生懸命で、どんな曲が演奏されていたのか全く覚えていないが、ちょっと照れくさい、うれしい思い出である。

映画の最後に、これはのちの映画でもよく使われているが、酔っ払い運転に巻き込まれたり、ベトナム戦争で行方不明、生徒会長は生まれ育った町で保険の外交員、カートは小説家になってカナダ在住と4人のそれぞれの消息がでる。 M子さんはお元気でしょうか?