紅く染まる晩秋

12月上旬、お寺は写っていませんが東福寺通天橋あたりで撮りました。
秋が暖かくて冷え込む日が少なかったせいか、紅葉が遅れたり紅葉しないで散っているような感じです。
日本の美しい季節を満喫されましたか?見過ごしてしまっていたら、ひととき楽しんでください。

印象に残る映画は人それぞれです。生い立ちや見たときの状態で共感したり、目に焼き付いた映像、忘れられない台詞、的を得たグッとくるサウンド、主人公に感情移入する演技やストーリー展開。アクション、コメディ、スリラー、ミュージカルなど、映画のタイプの好みでいろいろです。
私が見た好きな映画100本の印象を綴りながら連載します。遥か前に見た記憶なので思い違いがあると思います、お気づきの点や共感されたこと、違う見方のご意見がございましたらメールをお願いします。


連載011 
ストレンジャー・ザン・パラダイス[Stranger Than Paradise]
USA・西ドイツ 1984
監督:ジム・ジャームッシュ
 
主演:ジョン・ルーリー

ジム・ジャームッシュの作品はどれも好きだが、最初に見たこの映画がやはり新鮮で印象強く残っている。 なんかフットワークの軽やかさというか、興行的に成功しなければというようなビジネス的プレッシャーなんかなくて、力みがなく楽しんで自由に創ったという感じ。モノクロというのも雰囲気が合っていた。

ハンガリーから従妹がアメリカで暮らすために、先に移り住んでいる彼(J・ルーリー)を頼ってやって来る。ニューヨークとはいえブルックリンかブロンクスか判らないが、殺風景なところ。彼女はお気に入りのJ・スクリーミング・ホーキンスのブルーズ「I Put Spell On You」をラジカセで聴きながらやって来る。

選曲がクールで使い方もいい。ハリウッド映画では最初からずーと音楽が鳴りっぱなしのものがある。人の感情を映画のムードに引き込もうという事だろうが、メリハリがないので逆効果である。この映画では彼とその友だちと三人でドライブのときも、彼女が「私の好きな曲かけて」というと、またかよとスイッチを入れる。この感じがいいし必然性がある。

彼女が叔母さんのいるオハイオに行くとき、彼が古着屋で彼女に買ってきたワンピースを着て行くように言う。服を着てアパートを出て角を曲がるとすぐ、こんなダサイもの着ていられるかと屑入れに脱ぎ捨てるシーンが可笑しい。ダチと二人で博打のいかさまで金をまき上げ、久しぶりに彼女に会いに行く。「このあたりは何があるんだ」「エリー湖」行ってみると雪で何にも見えない真っ白の世界。そこに佇む三人と雪。このシーンがきれいだった。

オハイオは寒すぎると三人でフロリダに行く。彼女をほったらかしでドッグレースに熱を上げる二人。レース犬の名が「トーキョー・ストーリー」とは、監督が小津安二郎を敬愛する証か。彼女の置き手紙を見て、彼は飛行場へ連れ戻しに行くのだが・・・。 こんなエンディングなどのとぼけたユーモア感覚をオフビートと言うそうだが、この監督の持ち味である。以後、ジャームッシュの作品を見続けているが最近の2作はオフビートが効いてない気がする。 


連載012 
東京物語[Tokyo Monogatari] 松竹 1953      
監督:小津安二郎
 
出演:笠智衆 東山千栄子 原節子 杉村春子 山村聡  

ヴィム・ベンダース、ジム・ジャームッシュ監督をはじめとして、海外の映画監督にも絶大な人気の日本を代表する監督・小津安二郎。「東京物語」は「ウエストサイドストーリー」や「風と共に去りぬ」等とともに世紀の名作だから、あえてと思ったがやはり好きである。淡々としているが、じんわりと心に残り歳とともに味わい深くなる。

1953年(昭和28年)の頃にこの映画は日本の人情がうすくなったと嘆いているが、今となっては日本人はすっかり喉越しスッキリビールであり、原節子さんのような気高さはすでに日本鴇(トキ)であろう。

印象に残っているシーンはオフィスである。東京丸ノ内のビルと思われるオフィスに電話がひとつ壁に掛かっていて、ベルが鳴ると近くの人が取り次いで「○○さん電話です」と伝えると席を立って電話に出ていた。 47年後の今、1人に1つそれも歩きながら話ができる。相手の顔も見れる。ましてや、南極やサハラ砂漠、エベレスト山頂でも通話ができる時代。このテクノロジーの進化のすごさ。反面、世の中のスピードアップとともに、ハードに仕事をこなしストレスを抱えて、生活は便利になっているのに人の心は疲れている。

TBS系列の日曜夜のTV番組、発展途上国へ行くときは良く見ているが、パプアニューギニアの深い森に住む人達はいまだにテクノロジーとは無縁の昔ながらの生活を営んでいる。客人を精一杯もてなそうと、びっくりするような食べ物が出てきたり、暮らしぶりが興味深い。余計な情報が入らない分おしなべて彼らは非常に純粋で、目が輝いているのが画面から伝わってくる。 心が疲れたり、人生に退屈してしまうのはテクノロジーの進化と比例しているように思える。しかし、便利なモノを知ってしまった私たちは以前の暮しには戻り難い。

終戦後間もなくゼロから立ち上がり、心にエネルギーを満ちあふらせて、テクノロジーは今と比べものにならない頃につくられた映画に日本の名作といわれるものが集中している。
「酔いどれ天使」昭和23年、「晩春」昭和24年、「羅生門」昭和25年、「麦秋」「めし」昭和26年、「生きる」昭和27年、「東京物語」「雨月物語」昭和28年、「七人の侍」「ゴジラ」昭和29年、「浮雲」昭和30年等々。